昭和時代の吉と𠮷

1.昭和時代の教科書

『高等科国語. 第1』 文部省 編 昭和19年(1944年)(国立国会図書館オンライン
太平洋戦争中、昭和16年から始まった“国民学校”高等科(12歳〜14歳が通学。現在の中学1、2年に相当)の国語教科書にて、『秀吉』は活字で『吉』となっております。

『初等科国語. 第4』 文部省 編 昭和17年(1942年)(国立国会図書館オンライン
太平洋戦争中、昭和16年から始まった“国民学校”初等科(現在の小学校に相当)の国語教科書にて、『豐臣秀吉』は活字で『吉』となっております。
また、本書にて『住吉神社』という言葉が使われていますが、こちらも活字で『吉』となっております。

『小学国語読本. 尋常科用 巻7』 文部省 著 昭和11年(1936年)(国立国会図書館オンライン
昭和初期の尋常小学校(現在の小学校に相当)の国語教科書にて、『木下藤吉郎』(豊臣秀吉)は活字で『吉』となっております。
また、本書にて『住吉神社』『豐臣秀吉』という言葉が使われていますが、いずれも活字で『吉』となっております。

『高等小學讀本. 卷4』 文部省 著 昭和5年5月(1930年)(国立国会図書館オンライン
昭和初期の高等小学校(12歳〜14歳が通学。現在の中学1、2年に相当)の教科書にて、『吉田松陰』は活字で『吉』となっております。

2.昭和時代の文学

『新釈諸国噺』 太宰治 著 昭和20年(1945年)(国立国会図書館オンライン
太宰治の短編集、『新釈諸国噺』(しんしゃく しょこくばなし)では、『吉野山』、『吉野』は活字で『吉』となっております。
また、本短編集にて『猿の吉兵衛』『吉太郎』『太吉爺』『吉田』『大吉』『吉郎兵衛』『吉州』という言葉が使われていますが、いずれも活字で『吉』となっております。

『甚吉記』 室生犀星 著 昭和16年(1941年)(国立国会図書館オンライン
室生犀星(むろおさいせい)の著書、『甚吉記』(じんきちき)について、表紙と扉では筆字で『甚𠮷記』となっており、『𠮷』の字が用いられておりますが、本文では活字で『甚吉記』となっており、『吉』の活字が使われております。

『藤村少年読本. 尋 4の巻』 島崎藤村 原作[他] 昭和5年(1930年)(国立国会図書館オンライン
島崎藤村の著書、『藤村少年読本. 尋 4の巻』では、『庄吉』、『春吉』は活字で『吉』となっております。
また、本作にて『吉さん』『吉村の小父さん』とありますが、いずれも活字で『吉』となっております。

『蟹工船』 小林多喜二 著 昭和4年(1929年)(国立国会図書館オンライン
小林多喜二の小説、『蟹工船』では、『健吉』は活字で『吉』となっております。
また、本小説にて『不吉』という言葉が二回使われていますが、どちらも活字で『吉』『吉』です。

『太閤秀吉物語』 昭和3年(1928年)(国立国会図書館オンライン
昭和初期の歴史本である『太閤秀吉物語』では、表紙と扉は『太閤秀𠮷物語』で『𠮷』となっております。
また、本書の本文では、『太閤秀吉物語』は活字で『吉』となっております。

『河童』 芥川龍之介 著 昭和2年(1927年)(国立国会図書館オンライン
芥川龍之介の小説、『河童』の原稿では、『英吉利語』(イギリス語)は手書きで『吉』となっております。

3.昭和時代の地誌

『吉津村誌』 吉津村 編 昭和5年(1930年)(国立国会図書館オンライン
日本三景の一つ、『天橋立』がある京都府宮津市は、昭和時代に旧宮津町や旧吉津村などの村が合併して宮津市となりましたが、その旧吉津村の地誌である『吉津村誌』の地図のページでは、『𠮷津村』は『𠮷』となっております。
また、本誌の扉ページでは、『吉津村誌』は活字で『吉』となっております。
この吉津村の村名の由来については、本誌に次のような記述が残されております。
『別紙須津村文珠村兩村合併一村ト相成度旨願出候ニ付テハ村名之儀右兩村協儀ノ上須津村ノ津ノ字ヲ取リ文珠村氏神吉野神社ノ吉ノ字ヲ取リ吉津村ト改稱致度候間此段上申仕候也 明治二十一年九月十日』
この書面が当時の郡衙の郡長に進達されて、郡長がこれを採用して吉津村と裁定し、明治二十二年四月一日、町村制の施行と共に実施されたそうです。

4.昭和時代のマンガ

『トン吉拳闘王』 新関健之助 著 昭和24年(1949年)(国立国会図書館オンライン
昭和前期の新関健之助のマンガ、『トン吉拳闘王』では、表紙の『トン吉』の『吉』は、上下の横棒(吉の1画目と3画目の横棒)の長さが“ほぼ”等しい『吉≒𠮷』となっております。(≒は、「ニアリーイコール」、ほとんど等しい、という記号です。)
可愛いらしくて、楽しい雰囲気の『吉≒𠮷』の字ですね。
また、本作品にて丸みをおびた『吉』や『𠮷』の字、そして吉のようで𠮷のような『吉≒𠮷』の字があり、作中にゆかいで楽しいリズムを生み出している感じがしますね。

『一竹さん : 漫画童話』 清原斉 著 昭和5年(1930年)(国立国会図書館オンライン
清原斉の漫画童話、『一竹さん』では、『熊吉』は活字で『吉』となっております。

はじめまして、作家の水瀬希星です。
この度、楽天ブックス様の電子書籍より、吉の字の歴史をテーマにした本、『吉を辿る物語 上』を上梓させていただきました。
「吉と𠮷とは?」、「吉と𠮷の歴史とは?」について、100以上の古書や古文書(明治時代の小学読本や源氏物語や東海道五拾三次や膝栗毛や関ヶ原合戦絵巻など)に記された吉と𠮷の字をめぐる本になっております。
主人公は、17歳の男子高校生二人で、歴史上の様々な吉と𠮷について触れていく冒険読本です。
『吉を辿る物語 上』では、昭和時代から戦国時代までの吉と𠮷の歴史を、愛でていただけます。
(下巻は、日本の室町時代から古墳時代まで、そして古代中国を予定しております。)

吉と𠮷の歴史につきまして、ご興味がございましたら、ぜひ御手にとって、近代、近世、中世の吉と𠮷をご鑑賞して愛でて頂ければ、この上ない幸せです。
どうぞ宜しく御願いいたします。

令和三年、夏、葵月
水瀬希星

吉を辿る物語 上 [電子書籍版]

吉と𠮷の歴史

吉と𠮷の歴史について、ご紹介しています。古書や古文書など、歴史上の吉と𠮷の字をご鑑賞いただける歴史文字博物館のようなつくりになっております。『吉を辿る物語』の著者、水瀬希星が製作いたしました。